少女趣味こーなあ 長屋版

長屋の今月の少女趣味こうなあ 8

競争               福中都生子

生きるということが
 競争などであってはたまらない
 戦争や侵略や人殺しの果ての
 生き残りであっては恥ずかしい
 生きるということは弱肉強食ではない
 生きるということは助けあうことではないか
 人生が助けあいの共演の舞台であるならば
 同じ時間のてのひらの上で
 こぼれかけている人たちに
 まんなかの人は手をさしのべるだろう
 片はしの人は まんなかの人の手を握りしめるだろう
 一本の岩すみれの花でさえ
 大地の滋養を分けあって生きている
 一匹の野生のライオンも
 満腹のときは 余分の餌ものを狙わない
 人間社会の生存競争というものが
 もし 長生きの競争であるならば
 長く生きた人は その時間だけ
 人を助けた人でなくてはならない
 しかし
 人を多く助けた人は
 どういう訳か
 早死にをする

 

虎さん この人のお名前は、どのように読むのですか。

熊さん ふくなかともこさん。去年の一月に八十歳で死去されたそうや。

ご隠居 わしは何年か前にこの詩を読んだんやけど、特に最後の四行がとても衝撃的だったんを覚えてる

熊さん ご隠居。 長く生きた人は その時間だけ
 人を助けた人でなくてはならない

ご隠居 それを言うくれるな。わしはその言葉を聞くとアナがあったら入りたくなるねん

虎さん そうでんな。ご隠居は人の生き血を吸って長生きしてますもんな

ご隠居 失礼なこと言うな。

せやけどわしは、天理教を信仰している全ての人に、長生きの競争になっていないかと、自問自答して欲しいんや。そしてこの二行を心に留めて欲しいと思うんや

熊さん 天理教に限らず、日本全体が健康第一の健康おたくが蔓延してますもんな

ご隠居 病気や出直しは神様の領分や。健康は大事やけど、わしらの人生は、それだけが目的ではないと思うねん